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きっとアレが本当の強さなんだ

今日、さっき、駅前でのもめごと。ハタチ前後の酔った若者と、五十代後半のお父さん(多分)。

文句あんのかゴラア!!

ぶち殺すぞ!ゴルアアアア!!

若者は巻き舌で絶叫し、お父さんは怯えながら何度も謝るように頭を下げていた。遠目にいた僕はもちろん理由も知らないんだけど、

あーこれはヤバい。と思って止めに入ろうと思った矢先、若者のローキックがお父さんの膝あたりに入った。

 

お父さんは崩れ落ちて地面に這ってしまった。若者はまだ何かわめいている。ようやく立ち上がったお父さんは、ビジネスバッグを抱えて一目散に逃げ出した。

若者はその場から動かなかった。僕はホッとした。何があったか知らないけど、お父さん逃げてーー!という気持ちだった。

ところがあろうことか、若者がお父さんを追いかけだした。いよいよヤバいと思って、僕も若者を追って走った。

お父さんは走るのが遅いし、それこそ何十年も走ることなどしてなかったであろう後ろ姿は、お世辞にもスタイリッシュではなかった。

僕なりの全力ダッシュでなんとかお父さんが捕まる前に、追い付いて後ろから思い切り突き飛ばした。若者は前にゴロゴロとこけた。若者は何か喚いていたけど、酔っていたせいか座り込んですぐに立ち上がる様子もなかったので、僕はそのまま立ち去った。

 

お父さんは逃げ切れた。良かった。見ず知らずの若造に怒鳴られて蹴られたけど、お父さんは逃げるという選択をした。恐怖心もあったかも知れないけど、それだけじゃ無かったと思う。

お父さんはとっさに家族や会社のことが頭をよぎったんだと思う。自分がこの年になって大怪我したら、どれだけ家族が悲しむか。もしかしたらボッコボコにされて会社に行けなくなったら?死んでしまったら?家族の暮らしはどうなる?

 

お父さんはすごかった。公衆の面前で辱めを受けながらも、きっと家族を守ったんだ。逃げたんじゃなくて、自分と戦って勝ったんだ。本当の強さを見た気がする。逃げることが逃げることじゃないなんてすごいよ、お父さん。

いくつになっても男の戦闘本能そのものは消えない。僕は四十代半ばだけど、体は衰えても気持ちはそのままだ。ラグビーをやっていたせいか分からないけど、少々の打撃系に怯むこともない。だからもし絡まれたのが僕だったら逃げる選択はできなかった気がする。そして若者にたこ殴りされて大怪我したんだろうなあ。

 

誰かの言葉で「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格がない。」というのがあるけど、今日のお父さんは強くて優しかった。もしかしたら膝を怪我してたかも知れないけど、きっと家族には、駅でつまづいて転んだとか言うんだろうな。で、奥さんに、もう年なんだからしっかりしなさいよ!とか怒られるんだろうな。かっこ良すぎだよ、お父さん。